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“青年”(バリトン)=なぜ“オルフェ”?〔その1〕 [登場人物]

このところずっと考えています。そもそも、なんで“オルフェ”なのだろう。

1960年初演時の作品名は『暗い鏡』で、1967年のザルツブルグ・オペラ・コンクール応募に際して改訂された際に『ヒロシマのオルフェ』に改められました。

オルフェといえば、もちろんギリシャ神話の“オルペウスとエウリュディケ”*の主人公。
(*「ギリシア神話」〔石井桃子 編・訳、初版1958~あかね書房 / 新版2000~のら書店〕の表記による)
彼のキーワードを思いつくままにあげれば:
・竪琴の名手
・最愛の妻が毒蛇に咬まれて姿を消す
・地下の死の国に妻を取り戻しに行く
・音楽の力で妻を地上に連れて帰る許しを得る
・「後ろを振り返ってはならない」という禁
・あと少しのところで禁を破る
・死の国に戻されてしまう妻
など。

このギリシャ神話の“オルペウス”と、われらが“オルフェ”こと“青年”(バリトン)について考えてみるのですが、これが意外にもすぐには結びつかない気がしてならないのです。

ギリシャ神話の物語の舞台は、

草原→
地下の死の国→
地上へ戻る暗い道→
日光が見え始めるあたり→
再び別離(妻は死の国へ)

というのが基本的な流れでしょうか。

一方、『ヒロシマのオルフェ』の場面設定は、スコアのとびらの記載によれば以下のようになります。

時 現代
所 日本のある街のかたすみ

第一場 ある街角 夜更け 街灯が一つだけ
ある暗る街角〔原文ママ〕
第二場 ホテルの暗い部屋
第三場 未来の世界
第四場 もとの部屋
第五場 同じ部屋-暗黒世界の片隅
第六場 同じ部屋 朝
第七場 病院の外科病棟


あるいは、登場人物という角度からみてみると(歌唱部分がなくても舞台にいると想定される場合は【 】カッコ付)、

第一場 娼婦たちの合唱団/通行人A・B・C・D(シュプレッヒ・ゲザング)/中年の娼婦あるいは巫女/青年/若い娘
第二場 青年/死の娘/暗黒世界の合唱団
第三場 光の子供らの合唱団/青年/【死の娘】
第四場 死の娘/青年/暗黒世界の合唱団/三人の兵士(黙役)/死の国の運転手
第五場 死の国の運転手/娘/暗黒世界の合唱団
第六場 中年の娼婦/青年
第七場 医師-死の国の運転手/青年/暗黒世界の合唱団/看護婦-死の娘

となっています。

ここまで整理して、いったんおやすみ。〔その2 につづく〕
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“あそんでいかない?”(第1場冒頭)

オーケストラ・ニッポニカ第17回演奏会「芥川也寸志 管弦楽作品連続演奏会 その3」(2010/3/14(日)、東京・ティアラこうとう)に向けて、昨年12月から歌劇『ヒロシマのオルフェ』を練習しています。

以前にCDで聴いたこともあったのですが、これほど凄い作品とは!
年末年始の休みのあいだも、気がつくと頭の中で『オルフェ』が鳴っていて、つい色々考えてしまうので、思いついたことをここにメモすることにしました。

「あそんでいかない?」
これはもちろん、このオペラで最初に歌われることば。歌うのは“娼婦たちの合唱団”(コントラルトのコーラス)。
この、最初のことばが、既にしていかに選びに選び抜かれているか、ということに先日思いあたりました。

このオペラが原爆と真正面から向き合う作品であることは、あまりに明らかです。そして、このオペラは、個人にとっての被爆という現実の核心を表現することで、結果として極めて広大なスケールで、普遍的な人間のさまざまな側面を切実に、しかも豊かに、愛着を持って表現し得ていると感じられます。

「あそんでいかない?」
コンサートホールという場は、原爆というテーマに向き合うには、一見そぐわない…ということは、大なり小なりいまの私たち誰もが感じることではないでしょうか。
この最初のことばは、その私たち聴き手の戸惑い、気の重さをいわば逆手にとって、一気に作品の世界へと引きこんでいきます。
台本の圧倒的な力。そして、最初のことばが発せられる前に演奏される序曲、第1場冒頭の音楽の、驚くべき凝縮力。

オーケストラ・ニッポニカ第17回演奏会
<芥川也寸志管弦楽作品連続演奏会・その3>
2010年3月14日(日) 16:00開演予定/東京・ティアラこうとう
指揮:本名徹次
曲目~
芥川也寸志: 音楽と舞踊による映像絵巻「月」 (1981)[舞台初演]―演奏会形式による
芥川也寸志: 歌劇「ヒロシマのオルフェ」*(1967)台本/大江健三郎―演奏会形式による

*青年:黒田博(バリトン) / 若い娘、のちに看護婦:腰越満美(ソプラノ) / 中年の娼婦、実は巫女:加賀ひとみ(メゾソプラノ) / 死の国の運転手、のちに医師:吉田伸昭(テノール) / 合唱:Chor June、すみだ少年少女合唱団他

副指揮:四野見和敏
管弦楽:オーケストラ・ニッポニカ

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